令和元年も終りに近づいたので、例年の如く、永文堂に於ける電子出版の振り返りを書いてみることとする。今年の賣上は、以下の通りである。
・一月…… 四册 『地に潜むもの』二册、『地に叛くもの』一册、『煙草と惡魔』一册
・二月…… 三册 『地に叛くもの』一册、『修道院の秋』一册、『煙草と惡魔』一册
・三月…… 五册 『地に潜むもの』一册、『地に叛くもの』二册、『靜かなる暴風』一册、『父を賣る子』一册
・四月…… 一册 『地に叛くもの』一册
・五月…… 五册 『地に叛くもの』二册、『靜かなる暴風』一册、『手品師』二册
・六月…… 三册 『地に叛くもの』一册、『手品師』一册、『涯なき路』一册
・七月…… 三册 『地に潜むもの』一册、『地に叛くもの』一册、『煙草と惡魔』一册
・八月…… 二册 『靜かなる暴風』一册、『煙草と惡魔』一册
・九月…… 三册 『地に叛くもの』一册、『手品師』二册
・十月…… 五册 『地に潜むもの』一册、『地に叛くもの』一册、『靜かなる暴風』一册、『二人の文學青年』二册
・十一月……二册 『地に潜むもの』一册、『二人の文學青年』一册
・十二月……四册 『地に潜むもの』二册、『地に叛くもの』一册、『靜かなる暴風』一册
合計四十册である。前年は三十七册であつたので、微増といふ結果となる。買つて下さつた方々には心より感謝を申し上げたい。
今年の新刊は五月の久米正雄『手品師』と、十月の新井紀一『二人の文學青年』の二册だつた。いづれも賣上は芳しくなく、新井の兵隊・プロレタリア文學は豫想通りであつたが、久米のはうは現状として青空文庫の登録作品數も多くはなく、且つ平成二十九年末にゲーム「文豪とアルケミスト」に實裝されたため、この作家の作品集は、或る程度の賣上は見込めるかと思つたのだが、豫想は外れて新井と殆ど差のない結果となつた。
尚、消費税率引上げのためか、ロイヤリティが改定されて、二百圓の電子書籍の場合、六十五圓であつたのが六十四圓になつた。廉價の上に多量に賣れるものでもないだけ、一圓の差は矢張り大きい。今後、値上げも含めて檢討してみたいと思ふ。
そして賣上は、矢張り島田清次郎『地上』の一強である。特に十二月には既刊の三册を一度にまとめ買ひして下さつた方もをられた。現在は第四部『燃ゆる大地』の翻刻作業の最中であり、十二月十五日現在、全十章中の第九章に差し掛かつたところである。主人公はここから最終卷まで、革命家の野島民造といふ人物になるのだが、これも出版すれば、或る程度は繼續的に細々と賣れてゆく電子書籍となるであらう。
來年からは社會人となるので電子出版も頻度は減るであらうが、『燃ゆる大地』は令和二年前半邊りまでの出版を目指したい。續く『我れ世に勝てり』についても、既に全頁のスキャンは完了してをり、來年には翻刻に取り掛かる豫定である。
そして四月には、初めてのレビューが投稿された。投稿者の無平さんは、六二七字に渡り『地に叛くもの』の感想を熱く書いて下さり、強い感謝の念を禁じ得ない。來年には新たな讀者からのレビューが得られることを期待したい。
・令和二年一月八日追記……十二月二十四日に『地に叛くもの』が新たに一册賣れ、令和元年に賣れた本は計四十一册となつた。