三島由紀夫短篇の新潮文庫收録状況

三島由紀夫の長篇は全て文庫本で現在も刊行され續けてゐるといふのは知られてゐるが、ふと短篇のはうはどうなのだらうと思つて調べてみた。短篇集はほぼ全て新潮文庫で出され、自選短篇集である二册「花ざかりの森・憂国」「真夏の死」のほか、「鍵のかかる…

安部公房の新潮文庫收録作品

安部公房の作品は新潮文庫で多く刊行されてゐるが、意外にも現在では絶版になつてゐるものも幾つかあるらしいことに最近氣付いた。初版の刊行年を括弧内に記し、刊行年順に收録作品を竝べた。青色にしたものが、現在絶版となつてゐるものである。 ・他人の顔…

Amazon KDPによる電子書籍出版の振り返り(平成三十一年/令和元年)

令和元年も終りに近づいたので、例年の如く、永文堂に於ける電子出版の振り返りを書いてみることとする。今年の賣上は、以下の通りである。 ・一月…… 四册 『地に潜むもの』二册、『地に叛くもの』一册、『煙草と惡魔』一册・二月…… 三册 『地に叛くもの』一…

《文フリ・平成三十年冬》髙﨑洋『鏡像 ―ミラード―』/あつしれんげ『退屈な日々の過ごしかた』

平成三十年冬に「文学フリマ」で購入した小説同人誌の、全ての感想を書かうと思ひながら早一年が經つてしまつた。そこで今からでも、少しづつではあるが書いていかうと思ふ。取り敢へず二作品を紹介する。 髙﨑洋『鏡像 ―ミラード―』(霧虹文芸社) 非常に暗…

『長篇三人全集』(新潮社)一覽

『長篇三人全集』は昭和初期に、圓本流行に乘じて新潮社から發行された全二十八卷の圓本全集で、當時の流行作家であつた中村武羅夫、三上於菟吉、加藤武雄の三人の長篇小説を集めてゐる。いづれの作家も現在では殆ど忘れ去られ讀まれることも少なくなつた作…

Amazon KDPによる電子書籍出版の振り返り(平成三十年下半期)

平成三十年も愈々終りに近づいた。ここで半年毎の恆例となりつつある、Amazon KDPに於ける電子書籍出版の、賣上の振り返りをやつていかうと思ふ。 因みに平成三十年後期は、九月に出した島田清次郎著『靜かなる暴風(地上・第三部)』以外に出版したものはな…

Amazon KDPによる電子書籍出版の振り返り(平成三十年上半期)

Amazon KDPで電子書籍の出版を始めて、一年以上が經たうとしてゐる。前年の賣上成績は以前の記事で紹介したが、平成三十年も半分を過ぎたので、今年に入つてからの六ヶ月の賣上をまた紹介していきたいと思ふ。 因みに今年に入つてからは四册の本を出してゐる…

國立國會圖書館「著作者情報公開調査」に情報を送つてみた話

最近殊にお世話になつてゐる國立國會圖書館だが、最近になつて「著作者情報 公開調査」といふものをサイト上で行つてゐることを知つた。 著作者情報公開調査-トップ 国立国会図書館では、資料をインターネット公開するために、著作者/著作権者に関する公開調…

Amazon KDPによる電子書籍出版の振り返り(平成二十九年)

平成二十九年も殘り僅かになつたので、今年になつてから私が始めたことの一つを、ここで一度振り返つておかうと思ふ。それは電子書籍の出版である。 ブログにはこれまで書いてゐなかつたのだが、以前からAmazonのKindle Direct Publishing(KDP)といふサー…

ブログを移轉した

三年近くFC2ブログを使つてゐたのだが、はてなアカウントを作つたのだからブログもこちらで書くことにしてしまはうかと、最近になつて考へ始めた。以前から廣告の多さも氣になつてはゐたのである。そこで檢索してみたところ、大變親切に解説をして下さつてゐ…

國立國會圖書館へ行つて來た話

先日、國立國會圖書館へ、利用者カードを作りに行つた。 何故利用者になることにしたかといふと、最近になつて、近代の樣々な文學作品の翻刻をしたいと考へ始めたからで、自分としては主に、入手困難な作品を翻刻して簡單に入手出來るやうにしたいといふ考へ…

竹田敏彦『時代の霧』

竹田敏彦といふ作家を知ったのは、偶然目にすることとなつたこの記事――『出版・読書メモランダム』内の「古本夜話480 昭和十年の流行作家竹田敏彦と『涙の責任』」(http://d.hatena.ne.jp/OdaMitsuo/20150608/1433689207)に於てであつた。昭和十年代の…

『現代知性全集』一覽

圖書館で先日、學術出版會が2010年に發行した『日本人の知性』シリーズを見つけたのだが、このシリーズは嘗て日本書房から1958年から1961年に掛けて出された『現代知性全集』 を底本とし復刻したものとあつた。しかし『現代知性全集』 の全てを復刻した譯で…

國立大學人文系學科廢止へ――學術研究の輕視

文部科學省は平成26年8月、省内の「國立大學法人評價委員會」の議論を受けて、「教員養成系、人文社會科學系の廢止や轉換」を各大學に通達した。重大な事件であるが、驚いたことに殆ど騷ぎにはなつてをらず、東京新聞が9月2日に「国立大から文系消える?」と…

表外漢字含有人名蒐集《2》

《1》はこちら 表外漢字含有人名蒐集《1》 - floralraft’s blog 《2》タ行~ワ行 タ行 ・高倉 永祜(たかくら ながさち)1839‐1868 公卿、高倉家第二十一代當主 ※示す偏に古 ・高島 鞆之助(たかしま とものすけ)1844‐1916 薩摩藩士、陸軍軍人(中將)、政…

表外漢字含有人名蒐集《1》

平成26年12月現在、常用漢字表及び人名用漢字表に掲載されてをらず、人名に使用することの出來ない漢字を名前に含む人物を示した。舊字體は除外したが、異體字は掲載したものもある。主にWikipediaを參考とした。 ※誤り等ありましたらお知らせ下さい。 ※後に…

『ナナ』エミール・ゾラ著

『ナナ』はエミール・ゾラの『ルーゴン=マカール叢書』のうちの一篇で、第九篇に當る。私は、ゾラの著作を讀むのはこれが初めてであつた。 ナナは男性を肉感的に引きつけてやまない女性として描かれる。何人もの男性が登場するのだが、どれもナナに戀焦がれ…

『春琴抄』谷崎潤一郎著

谷崎潤一郎の作品を讀むのは實はこれが初めてである。段落がほとんどなく句讀點も所々つけられてゐない谷崎の文章は私にとつて新鮮であつたが、それがこの小説の持つ獨特の雰圍氣を形作つてゐた。 盲目といふやや俗世間から離れた環境の中での生活、更に既に…

『中二病』などのレッテル

最近になつて、インターネット上でよく見掛けるやうになつた言葉の一つに『中二病(廚二病)』がある。中二『病』とは言つても病氣ではなく、これは『中學二年生頃に見られる背伸びしがちな行動や言動』を揶揄するもので、「しばしば中二病として嘲笑の対象…

『はつかねずみと人間』ジョン・スタインベック著

スタインベックの著作を讀むのは、『怒りの葡萄』以來である。『怒りの葡萄』は1930年代の大恐慌の頃に大地主に土地を追はれた農民の過酷な生活と苦しみゑがいたものだつたが、『はつかねずみと人間』もこれと時代はほぼ同じである。 『怒りの葡萄』に出て來…

『ネトウヨ』の定義

最近になつてよく見掛けるやうになつた『ネトウヨ』といふ言葉。テレビ番組等でも取り上げられたので、知つてゐる方も多いであらう。この間ツイッター上でこの言葉に關する議論が展開されてゐるのを見て、はつと氣づかされたことがあつた。今回はそのことに…

レインボーアイコンの名譽

最近、ツイッター上で右下に虹が描かれたアイコンを目にする。この虹はLGBT(同性愛者、性轉換者、異性裝者などの人々のこと)の尊嚴や權利運動の象徴で、レインボーフラッグなどと呼ばれるものである。ツイッター上では、先日ソチオリンピックが行はれたロシ…