讀書

安部公房の新潮文庫收録作品

安部公房の作品は新潮文庫で多く刊行されてゐるが、意外にも現在では絶版になつてゐるものも幾つかあるらしいことに最近氣付いた。初版の刊行年を括弧内に記し、刊行年順に收録作品を竝べた。青色にしたものが、現在絶版となつてゐるものである。 ・他人の顔…

竹田敏彦『時代の霧』

竹田敏彦といふ作家を知ったのは、偶然目にすることとなつたこの記事――『出版・読書メモランダム』内の「古本夜話480 昭和十年の流行作家竹田敏彦と『涙の責任』」(http://d.hatena.ne.jp/OdaMitsuo/20150608/1433689207)に於てであつた。昭和十年代の…

『ナナ』エミール・ゾラ著

『ナナ』はエミール・ゾラの『ルーゴン=マカール叢書』のうちの一篇で、第九篇に當る。私は、ゾラの著作を讀むのはこれが初めてであつた。 ナナは男性を肉感的に引きつけてやまない女性として描かれる。何人もの男性が登場するのだが、どれもナナに戀焦がれ…

『春琴抄』谷崎潤一郎著

谷崎潤一郎の作品を讀むのは實はこれが初めてである。段落がほとんどなく句讀點も所々つけられてゐない谷崎の文章は私にとつて新鮮であつたが、それがこの小説の持つ獨特の雰圍氣を形作つてゐた。 盲目といふやや俗世間から離れた環境の中での生活、更に既に…

『はつかねずみと人間』ジョン・スタインベック著

スタインベックの著作を讀むのは、『怒りの葡萄』以來である。『怒りの葡萄』は1930年代の大恐慌の頃に大地主に土地を追はれた農民の過酷な生活と苦しみゑがいたものだつたが、『はつかねずみと人間』もこれと時代はほぼ同じである。 『怒りの葡萄』に出て來…